SAKURA PRESS

子どもの絵の発達について~年齢や発達段階に合った描画材料や見守り・声かけアドバイスとは~

2024.06.17

特集

MV_funai

子どもの絵の発達には、言葉の習得や身体の発達のように段階があります。年齢や月例に合った描画材料を準備し、その発達を妨げないようにしたいものです。

本コラムでは、子どもの絵の発達段階やそれに合わせた描画材料、養育者からよく出る困りごとへの対処法についてご紹介します。

子どもの絵の発達過程について

※絵の発達には、同じ年齢でも月齢によって差があったり、個人差があったりしますので、目安としてご参考になさってください。

0~1歳

身近な人や物の色を認識します

生まれたばかりの赤ちゃんは、白黒がぼんやり見える程度ですが、2~3か月頃から赤・黄・緑を、4~6ヵ月頃には、橙・紫・青も理解するようになります。6ヵ月を過ぎる頃には、ほぼすべての色を認識できると言われています。

描画材料(クレパス)を手に持って紙の上でなぐり描きを始めるのは、つかまり立ちができる1歳前後です。最初は、トントンと紙を叩くように点を打ち、その音を楽しみます。その際に偶然に手が動いて短い線が紙に映るとそれを意図的に繰り返し、紙面にできる弓形線や横線、縦線を楽しむようになります。

点や線がはっきりと見える色を養育者が与えるのではなく、子ども自身が自分で選べるように12色程度のクレパスを用意しましょう。身近にある見覚えのある色を意識的に使う姿が見られるようになるでしょう。

0_1_funaipng

2歳

身近な人物の好む色を意識して色を選びます

0~1歳の頃は手を動かす運動感覚を楽しんでいますが、2歳頃になると左右往復の横・縦線が加わり、イメージを思い浮かべ、「ブーブー」など呟きながら意味を持たせ、次第に渦巻のような形が出現します。描画が紙面の右半分、左半分などに偏るというような描くスペースにこだわる姿は、2歳後半になるとなくなり、紙面全体に絵を大きく描きひろげていきます。肩と腕が成長し安定してきたことや、視野の広がりと共に目と手が連動する成長期に入ったからと考えられます。

0~1歳同様、身近にいるお母さんやいつも使うおもちゃなど、見覚えのある色を好む傾向がありますが、描き慣れてくるとクレパスの色全色を使って、色を楽しむ姿に変わっていきます。色の名前も覚え、色に興味を持つ時期と言えるでしょう。

2_funai

3歳

色に興味を持ち、好きな色ができます

身近な人物や物の色に影響を受け、好きな色ができる時期です。

色の区別がつくようになり、好きな色ができ、絵を描く時は同じ色(単色)を好んで使う傾向が見られます。

2歳の後半より、複重円(円を重ねる)を描き、言葉の習得と重ねて、描いた円環に「これはパパとママだよ」と意味を付けて説明を加えていきます。「意味付け期」といい、言語力が豊かになる3歳頃の発達の大きな特徴です。よく喋る子どもはたくさんの複重円を描いて伝えてくれます。3歳後半になると、運動機能や言語能力の発達に伴って、終結した円を描き、目や口を認識し、顔を描く様子も見られるようになります。

衣類や持ち物の色に影響を受け、いつもピンク・水色というように同じ色を好む傾向があります。そういった場合、「他の色も使いなさい」と伝えるより、なぜこの色を好むのかを生活環境を通して理解していくと子どもの生活が見えてきます。好きな色が見つかることは色の発達の上で大切な通過点と言えます。

3_funai

4歳

描くことに興味を持つと、単色描きになります

形が描けることがうれしく、その形をはっきり見せるため、黒・青などの濃い色を好むようになります。人物や動物などの形の習得に夢中になり、色を変えないで描くのが特徴です。

また、画用紙を顔の輪郭として捉え、目・鼻・口を描くこともよくあります。4歳になると知的発達に伴って認知力も向上し、目、手、足を左右対称に表現し、頭足人を描きます。これは全世界に共通した表現の発達過程です。そこに長い耳が付けばウサギになり、たてがみが付けばライオンになるという、人物や動物を描く基本形です。周囲の大人が「顔に手や足があるのは変だ」と言ったりして直させたりはせず、これは表現の発達に必要な段階と捉えましょう。ここで矯正させては次の表現に進めなくなります。線と円との組み合わせで車、花、家などの形に興味を持ち、自由画帳などで何度も練習し、形を習得する姿も同様です。そんな時に使う色は、1色(単色)になりがちです。この時期は、色より形に興味付くという特徴があります。

4_funai

5歳

単色の表現から色と記号の対応が徐々にできるようになります

4歳の頃の頭足人の表現は徐々に胴の部分を意識して描き加えられ、人物らしい形に変化していきます。兄姉がいる場合は早くに6歳的表現に進化していきますが、そうでない場合はいつまでも頭足人の表現のままの子どももいます。友達の絵を見て気付くなど様々な方法で進化していきますので、温かく見守ってあげましょう。5歳の絵は4~6歳の調整期間と捉えましょう。

4歳の頃の単色描きから、りんごは赤色、木は茶色というように、次第に色と形の対応ができるようになってきます。5歳の色の使い方も6歳の様に徐々に色と形を意識し対応する様に変化していきます。この年齢は4歳と6歳の中間の発達年齢で、幼い子はまだ4歳の表現(単色描き)を、兄姉のいる子どもは色と記号の対応などの発達は早くなる傾向があります。

5_funai

6歳

色と記号の対応ができます

この時期になると、空間認識や形態認識が深まって説明要素が多くなる表現に発達してきます。人物の表現では、服を着る、靴を履く、アクセサリーをつける、鞄を持つといった具体的な表現が加わります。特に男女の描き分け、年齢層(赤ちゃん、おじいさん、おばあさん等)の描き分けなどもできるようになり、人物表現の完成期に入ります。また紙面の上を空、下を地面と捉え、道に家があり、花が咲き、空には太陽や雲などの情景を場面として表現できるのも大きな特徴です。その表現の中に、多視点構図法、展開図法など、この年齢特有の構図があり、これは小学校1~2年まで続きます。

りんごは赤色、木は茶色で葉は緑というように色と形をきちんと合わせて描く(色と記号の対応)発達も6歳で完成します。しかしまれに、赤、緑、青の認識がしにくく、実際の物とは明らかに違う色を選んで塗っている場合があります。色の使い方に疑問を感じたら、色覚異常の可能性もあるため専門医による検査をおすすめします。

6_funai

年齢別おすすめ描画材料

0~1歳

お道具箱+クレパス®

0~1歳は、いろいろなものを口に入れることで安全かどうかを確かめることがあるので、舐めたり、口に入れてしまうことも想定して材料を用意しましょう。

その点、クレパス®には有害な物は規制値以上含まれていないので、多少の誤食であれば心配しなくても大丈夫ですが、食べてしまった後、様子がおかしいと感じた場合は、病院に連れていきましょう。

また、欠片で窒息事故を起こす可能性がありますので、保護者の方の監視も元で使用させてください。

※クレパス・クレヨンを食べてしまった場合の対処法はコチラ

0-1_dougu

※画像に掲載の商品で「※印」のついているものは、幼稚園・保育園等向け商品ですので、一般販売はいたしておりません。

2~3歳

お道具箱+クレパス®+サインペン+のり+はさみ

はさみは3歳後半くらいから

色の認識には発達段階があるため、色数は多ければ多いほどいいわけではありません。初めに与える色数は、基本的な12色、多くても16色でよいでしょう。

この程度の色数を揃えることで、その子がどの色を好んでいるのかが見えてきます。

また、クレヨンとクレパス®のどちらがよいか、ですが、クレヨンはクレパス®より硬めで、筆圧が必要になるため、この年ごろの子どもには色が紙にうつりやすいクレパス®をおすすめします。

2-3_dougu

※画像に掲載の商品で「※印」のついているものは、幼稚園・保育園等向け商品ですので、一般販売はいたしておりません。

4~6歳向け(年中・年長)

お道具箱+クレパス®(16色がおすすめ)、サインペン、クーピーペンシル®、のり、はさみ、テープ、ホチキス

2~3歳向けに揃えた描画材料に加えて、このぐらいの年齢になると細部を表現しやすいペン先が細目の描画材料も好むようになるためサインペン、もしくはクーピーペンシル®などの色鉛筆を与えてあげましょう。また、これぐらいの年齢になれば、16色以上の多色を与えてあげてもよいでしょう。たくさんの色の触れることで子どもの感性はより豊かになり、多面的な視野が身に付きます。

また、子どもが使う描画材料を一緒に選んで購入することもおすすめします。そうすることで、子どもは自身が選んだ描画材料により愛着を持つようになり、絵を描くことにより前向きな気持ちが生まれることでしょう。

4-6_dougu

※画像に掲載の商品で「※印」のついているものは、幼稚園・保育園等向け商品ですので、一般販売はいたしておりません。

※クレパスは株式会社サクラクレパスの登録商標です。
※クレパスの普通名称は、オイルパステルです。

舟井先生直伝!保護者から出るお絵かきに関するよくある困りごと

困りごと①:自由帳(おえかき帳)がすぐになくなる(少し描いただけで次のページを使ってしまう)

先生からのコメント:子どもたちは幼稚園や保育園で描く絵と、自宅などで自由に描く絵とわけています。園で描く絵は子ども達にとっていわば、「よそゆきの絵」、子どもたちは、少し緊張感を持って描いています。反対に自宅で描く絵は、練習やトレーニングのような感じで力を抜いた絵を描いています。ですので、基本的には紙を使ってどんどん自由に描かせてあげてください。ただ、ほったらかしにするのではなく、描いた絵を見比べて、(例えば、1枚目と2枚目を見比べて…)こんなところがよくなったね!と具体的におおいに褒めてあげてください。

困りごと②:同じ色ばかり使って描く(2歳くらいのお子さま)、黒の使い方が気になる

先生からのコメント:4歳くらいまでは、同じ色ばかり使うのはOK!形を描くのが楽しくてついつい夢中になって単色だけで絵を仕上げてしまうことはしばしばあります。また、多くの方が気にされる黒の使い方については、基本的に黒だけを使って描いているのは問題ないと考えてよいでしょう。前述の通り、子どもは色を持ちかえることを忘れてお絵かきに夢中になることもしばしばあり、その延長と捉えてよいでしょう。反面、描いた絵を最後に黒で塗りつぶしてしまう場合は、子どもの心が救済を求めているメッセージであることが多いです。例えば家族の絵を描いた後、兄弟の絵だけを黒く塗りつぶしたりしている場合は、兄弟との関係や兄弟がいることでの愛情不足を読み取ることができます。こういった黒の使い方を注意深く観察し、子どもが何かストレスを抱えていそうであれば、フォローしてあげてください。

困りごと③:描くのが嫌い、興味がないお子さま

先生からのコメント:こういったお子さまには、絵がうまく描けた!という成功体験や、そもそも絵を描く、という経験が少ない場合が多いようです。まずは、年齢に合った描画材料を揃え、それらを手に取りやすい環境を整えてあげましょう。画材店等で描画材料を子どもと一緒に選ぶのもおすすめです。そろえる材料については前述を参考になさってください。

また、養育者の方も前向きな声かけを心がけてみてください。具体的には、「そうなの?知らなかった。じゃあ一緒にかいてみようか」、「むずかしいよね~。一緒に本で調べてみようか?」、「ママ(パパ)は、これ上手にかけてると思うんだけどなぁ」といった、子どもに寄り添った言葉をかけてあげることが大切です。

困りごと④:実際のものと明らかに違う色に塗っている場合(5、6歳のお子さま)

先生からのコメント:色の使い方から色弱等の目の異常に気付く場合もあります。5、6歳程度になっても実際のものと明らかに違う色を選んで塗っている場合(特に、赤・緑・青の使いかたで疑問を感じた場合)、色覚異常の可能性もあるので専門家へ相談しましょう。早期に発見することが大切です。日本人の場合、男性の約5%(20人に1人)、女性の約0.2%(500人に1人)の割合で色覚異常を持った方がいるそうです。

まとめ ~子どもの絵は「うまい・下手」で見るものじゃない!~

今回のコラムでは、舟井賀世子先生にご協力いただき、子どもの絵の発達についてご説明させていただきました。

舟井先生が、

「養育者は子ども達の絵にテクニックを求めて、それの出来・不出来を見るのではなく、子ども達が描いた絵から子どもの心を見る、ということを心がけてほしいです」

と仰る通り、絵の上手い下手を見るのではなく、子どもの絵から子どもの心理状態やもしあるのであれば抱えている問題をくみ取ってあげることが大切です。子どもの絵をよく見ることでうわべだけではない、子どもの心に届く適切な声かけができ、子どもは「しっかり見てもらっている=自分は愛されている」という安心感を得て、それは自己肯定感の向上に繋がることでしょう。

仕事や家事で忙しいのは山々ですが、じっくりと子どもの絵を見る機会を作ることで、「もうこんな絵が描けるのね!」という驚きや「みどりのクレパス®をたくさん使っているからみどりがすきなのかな」といった気付きだけでなく、「妹の絵を描いたあとその絵を塗りつぶしている…、妹ができてからしっかり構ってあげれていないから寂しいのかな…」というような子どもからのメッセージも読み取ることができるかもしれません。

舟井賀世子先生のご紹介

元大阪信愛女学院短期大学子ども教育学科客員教授。1948年生まれ。大阪基督教短期大学卒業後、私立清教学園幼稚園に長年勤務。その間、幼稚園内では園児の絵画指導に従事。幼児造形教育連盟の運営委員助言者として活躍。大阪信愛女学院短期大学、大阪キリスト教短期大学、太成学院大学で講師を歴任、同様に全国各地の造形研究会の講師、幼稚園・保育園の先生がたの絵画指導に従事。サクラクレパスが開設した幼稚園・保育園の先生向けWEB「保育Studio(ほいスタ)」アドバイザーのほか、サクラクレパス出版部より『みんなで造形 絵を描こう!4・5歳児 楽しむ絵から伝える絵へ』『みんなで造形 描こうよ!作ろうよ!2・3歳児 未就園児対策はこの一冊でばっちり!』『みんなで造形 やってみよう!0・1歳児 たくさんの「かな?」が実戦の中にヒントとしていっぱい!』『わくわく楽しい幼児の絵画〈1〉ほいスタ書籍シリーズ』『わくわく楽しい幼児の絵画〈2〉ほいスタ書籍シリーズ』の著書がある。現在も大阪を中心に、全国の幼稚園・保育園で子どもや先生がたを対象に絵画を起点とした講演を行っている。

書籍の紹介

もっと詳しく子どもの絵の発達について知りたい方は以下書籍をご覧ください。

funai_hon

『クレパスではじめよう!0~3歳の気持ちと成長がわかるおうちお絵かき』 『クレパスではじめよう!4~6歳の伝えたいことがわかるおうちお絵かき』

関連コラムのご紹介

初めてのお絵かきどんな画材がふさわしい

【はじめてのお絵描き】いつから始める?どんな道具がふさわしい?

TAG
#育児に役立つ情報
#クレパス・クレヨン
#汚れを気にせず使えるシリーズ