正面を向いた人間の顔の場合、まず中心線を引き、その線が顔の真ん中に来るように頭全体を描きます。頭は鶏の卵をひっくり返したようなかたち。線が上手く描けなくても気にせず、何回も描いてかたちを取りましょう。
SAKURA PRESS
【柴崎春通先生が特別レクチャー】水彩絵の具で人物画を描いてみよう!
YouTubeチャンネルの登録者数は148万人以上(2022年8月末時点)を数え、日本はもとより海外からも注目を集めている水彩画家の柴崎春通先生。そんな柴崎春通先生に「人物画の描き方を教えていただけませんか?」とお願いしたところ、快く承諾してくださり、今回の企画が実現しました!使った画材は小・中学校の教材としてもよく使われるマット水彩。加える水の量で、透明水彩風にも、不透明水彩風にも描ける水彩絵の具です。このマット水彩を使って実際に人物画を描きながら、気をつけるべき点や描き方のコツをやさしく楽しく教えてくださいました♪
まずは社員が自力で描いてみた!水彩絵の具による人物画
柴崎春通先生に描き方を教わるにあたり、まずはサクラクレパスの社員がマット水彩で人物画を描いてみることにしました。自社製品ではあるものの、マット水彩で絵を描くこと自体が数十年ぶり。実際に描いてみると、色の作り方が難しいな…陰の表現が上手くいかないな…と苦戦することばかり。どうにか描き上げたのがこちらの人物画。隣の写真は人物画のモデル(社員)です。
柴崎春通先生のコメントは?
続いて、描き上がった人物画を柴崎春通先生に見ていただきました。どんなふうに評されるのかドキドキでしたが「表情をよく見て描いてるね」「髪の毛を色んな色で表現しているところが良いね」と、工夫して描いたポイントを見抜いてくださいました。さすが絵画教室の講師を長く務められた柴崎先生!絵を描くことへの興味や意欲がさらに湧いてくるようなコメントをくださったことに感激しました。
柴崎春通先生がレクチャー!人物画の「下描き」のポイント
いよいよ、ここからは柴崎春通先生に人物画の描き方をレクチャーしていただきます。まずは下描きからです。下描き段階でのポイントとして柴崎先生が挙げられたのは「顔の基本的なつくり」。これは、水彩絵の具以外で人物画を描く時にもとても役立つポイントだそうです!
顔の基本的なつくりをマスターしよう!
柴崎先生によると、人間の顔というのは、目や鼻などのパーツは基本的な配置がほぼ決まっていて、どんな人でも大きくは変わらないのだそうです。なので、まずは顔の基本形を描き、それを土台にしてその人の特徴の部分を描き足していくと、随分描きやすくなるのだとか。なるほど確かに、基本形のベースがあれば、そこからの調整は描き慣れていない人でもできそうな気がします!
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【STEP1】中心線を引いて頭を描く
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【STEP2】目は頭の縦の長さ1/2の位置に
目の位置は、頭のてっぺんから顎の先までの長さを1/2にした部分にあります。まっすぐ横に線を引いて、目を閉じた人のように見えればOK。この線が目の下のラインになります。目の開きは、上に弧を描くように表現しますが、目の下のラインはまっすぐ。上下に弧を描いてラグビーボールのような楕円形にしないというのもポイントの1つです。
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【STEP3】頭の下半分のさらに1/2の位置に鼻
目を描いた位置から下にあたる、頭の下半分をさらに1/2にした位置に鼻があります。中心線と重なるように線を描くと、この線が鼻の穴がある下のラインになります。
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【STEP4】鼻から顎先までを3等分し、鼻に近い側の1/3の位置に口
鼻を描いた位置から顎の先までの長さを3分割した時に、鼻に近い側の1/3の位置に口があります。ここが上唇のラインになり、笑ったりして口が開いている場合は、下側に弧を描くように表現します。
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【STEP5】耳は眉と鼻の間の位置に
開いた目の上に眉がありますが、耳の位置はその眉と鼻の間にあります。耳の位置が描けたら顔の基本形の完成です。どんな人でも、基本形はみんな同じなので覚えておきましょう。
頭のかたちとパーツの配置で顔の基本形が描けたら、その人の特徴的な部分を描き足します。男性なら輪郭がやや角ばっていたり、笑って口が開いていると顎のラインが下に伸びたりしているので、そのような点を付け加えながら仕上げます。
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【STEP6】完成
今回お伝えした基本的な顔のつくりは覚えちゃおう!そうすると、お顔を描くのがとても簡単に、楽しくなるからね。最初に髪の毛を描きたくなる人も多いと思うけれど、まずはタマゴのかたちの頭から描き始めようね!
動画でより詳しく!柴崎春通先生による「下描き」の解説をチェック!
柴崎春通先生がレクチャー!人物画の「着彩」のポイント
さていよいよ、マット水彩を使った着彩に移ります!ここで柴崎先生が挙げてくださったポイントは「肌の色の表現」と「光と陰の捉え方」。肌の色は人によっても、光の当たり具合によっても、本当にさまざまな色に見え、決まった色というものはありません。押さえるとよい基本のポイントはありますが、あとは自由にあなたが感じる色を表現してみましょう!とアドバイスをくださいました。
肌の表現は「赤色」・「黄土色」・「青色」の3色を基本に
肌の色は本当にさまざまなので、今回のモデルの人物画を描く場合に限ってのことになりますが…と前置きをした上で柴崎春通先生が選ばれたのは「赤色」「黄土色」「青色」の3色。この3つの色の混ぜ具合によって、また白色を加えることによって、さまざまな色ができ、顔の部分によって異なって見える肌の色合いを表現することができるのだそうです。塗ってみて、この部分の色は違ったな…と感じても大丈夫。後から色を重ねることができるので、まずはおおよその色で全体を塗ってみましょう。
塗っていて色がなくなったら、また基本の3色で作ればOK!当然、同じ色は出来ないと思いますが、そこが面白いところ。顔は全部同じ色ではないのだから、塗る色も同じ色でなくていいんです。それくらい自由な気持ちで描くととってもいいね。
血の色の「赤」を足して、いきいきと見せよう!
基本となる肌の色を塗ったところで、ここでやって欲しいことがあるんだよね、と柴崎先生。それが、人間が生きていることの証、「血の色」を絵にも加えるということ!こうすることで、元気でいきいきとした印象になるのだとか。頬のあたりだけでなく、鼻や顎の先、そして耳もとっても赤い部分。そこに、肌の色を表現する基本の3色のうち、赤色の割合を増やした色を乗せていきます。
生きている人間は全身に血が流れているから、それを表現するには血の色の赤が大事!お顔を描く時は必ず加えてあげよう。血の色は元気印だからね!
光と陰は、割り切って塗ってみよう!
赤色を足してお顔が元気に見えるようになったら、次は日陰の部分を描いていきます。使うのは、肌の色を表現する基本の3色のうち、青色の割合を増やした色。先に塗った色より暗い色を作って、凹んでいる眼の部分や、出っ張っている鼻の脇や下、顎の下の首の部分など、日陰になっている部分を塗っていきましょう。だんだんお顔が立体的に見えてきたらOKです!
光が当たって明るい部分も描いていきます。先ほどの日陰は青の割合を増やしましたが、この場合は黄色や白色を増やして明るい色を作ります。塗りつぶすのではなくて、明るいなと思った部分にポンと置いてみる感じ。そうすると、そこが明るい色でいいのかどうか判断しやすくなります。いろんな色が見えると思うので、感じた色を自由に乗せてみましょう!
マット水彩は、水の量を増やせば透明水彩風に上から色を重ねることもできるから、おっかなびっくりで塗る必要ないんだね。暗い部分も明るい部分も、絵の具を薄く溶いて重ねてあげると、自然な感じに見えてきますよ!
動画でより詳しく!柴崎春通先生による「着彩」の解説をチェック!
人物画の描き方を今一度おさらい!
さて今回、柴崎春通先生の手ほどきで人物画の描き方を教わってきましたが、どうだったでしょうか?塗る色は決まっていない、自由な気持ちで描いていいという先生の言葉で、のびのびと楽しみながら描ける気がしてきますよね!
大きなポイントは3つ。「赤色・黄土色・青色で基本の肌の色を作る」「生きている証の血の色の赤を加える」「光と陰を思い切って描く」でしたね。夏休みに絵の課題がある子どもたち、子どもたちに絵を教える立場の先生方、ぜひ参考にしてみてください!
1947年千葉県生まれ。1970年和光大学芸術学科卒。荻太郎、中根寛に師事。2001年文化庁派遣在外研究員としてアメリカに留学し、The Art Students League of New York等で水彩の研究を行う。チャーリー・リードと親交を結ぶ。日本美術家連盟会員。元Salmagundi Art Club会員(米国)。元講談社フェーマススクールズ絵画科講師。
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- Watercolor by Shibasaki
- Watercolor by Shibasaki柴崎春通
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サクラクレパスの水彩絵の具「マット水彩」を詳しくご紹介
今回、柴崎春通先生に使っていただいたマット水彩は、1950年に開発された学童向けの絵の具です。小学校や中学校などの図工、美術の授業でもよく使われているロングセラー商品です。セットの場合は8色~24色と色数も豊富。もちろん、単色での購入も可能です。
透明調にも不透明調にも描ける絵の具です!
マット水彩は、多めの水で薄く溶くと透明水彩のように使えて、少なめの水で濃く溶くと不透明水彩のように使えます。透明水彩のように「にじみ」や「かすれ」も表現できるので、風景、静物、人物などの写実的な絵を描くことができます。また、濃く溶くと不透明水彩のようにムラなく均一に塗れるので、平面構成、ポスターなどのデザイン的な表現もできます。
キャップの外し方次第で出す量が調整できる!
マット水彩は、キャップの上蓋だけを開ければ絵の具を少量ずつ出しやすく、キャップを根元からねじって外せば一度にたくさんの量が出しやすくなります。出したい量の調整が簡単な上、キャップと上蓋が一体型になっているので、なくす心配も軽減されます。