秋季・特別企画展「里井純子クレパス画」－天上の花々を描く－

　クレパスで描きつづけた花々は、ほころび始めた花、咲きほこる花、しおれた花、折れた花、枯れた花など。それぞれにいっぷう変わった姿かたちをした花々でありながら、未完の魅力を強く漂わせている。画歴はわずか二十数年だったが、心を揺さぶる表現の妙は、それまでの紆余曲折を経た、しかし豊かな来歴がそれを支えていた。表現する力を培った時間は十分に長く、絵で表現することにたどり着いてからはとりつかれたように描きつづけた。そして、最期に満開の大輪を咲かせるまでの軌跡は、本展で展示する87点のクレパス画から見てとることができる。

　本展では花を描いた作品だけを展示した。ことさら慈しみ深く描きつづけたのが、《いつまでも憐憫と渋みがあり存在感のある枯れた花》だった。それらは永遠の命を得た花々であり、天上に咲く花々だったのだろう。