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【水彩色鉛筆の使い方】水の加え方次第で変わる、多様な表現を楽しもう♪

2024.03.13

特集

水彩色鉛筆の使い方を豊富な図と共に紹介するコラムです。

水彩色鉛筆は、水で溶かすと水彩画のようなタッチで描けるのが大きな特徴です。水の加減や溶かし方によって、仕上がりのタッチが大きく変わります。ここでは、水彩色鉛筆の基本的な使い方を、水の加え方とタッチに着目してご紹介します。

水彩色鉛筆とは

水彩色鉛筆は色鉛筆の種類のひとつです。一般的に色鉛筆と呼ばれるものは「油性」が主流ですが、水彩色鉛筆は「水性」で、芯には水に溶けやすい性質の顔料が用いられています。どちらも形状はそっくりで、同じように紙に描画できますが、水彩色鉛筆の場合は、水で溶かすことにより水彩画のようなタッチを表現することができます。

水彩色鉛筆と油性色鉛筆の違い

水彩色鉛筆と油性色鉛筆の最大の違いは、水に溶けるかどうかにあります。その点を除けば、見た目も使い方も、ほとんど変わらず見分けがつきません。ところが、水を加えると違いは一目瞭然になります。

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▲油性色鉛筆:水を含んだ筆でなぞっても変化なし

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▲水彩色鉛筆:水を含んだ筆でなぞると色が溶けてにじみ出す

水彩色鉛筆ならではの特性

水彩色鉛筆は、色をぼかす、グラデーションをつけるといった水彩画のような表現、使い方ができます。もちろん、水を使わなければ普通に色鉛筆画も描けます。さらに、水彩画風に描画する際も、水加減や溶かす手法によって仕上がりが少しずつ異なるので、さまざまなタッチを試したい、楽しみたい、という方にはもってこいと言えるでしょう。

水彩色鉛筆で描いた後を水でなぞった状態

上の画像は、水彩色鉛筆で描いたもので、中央から右側の部分は水分を加えています。油性色鉛筆と同様にさまざまタッチで描くことができますが、水が加わることでさらに表現の幅が広がることがお分かりいただけると思います。

水彩色鉛筆の使い方と仕上がりの変化

水の加え方次第で仕上がりのタッチが違ってくるのが水彩色鉛筆の面白さです。例えば、あらかじめ水を含ませておいた紙に色鉛筆で描く、描いた色鉛筆の上を水を含ませた筆でなぞる、削った色鉛筆の芯を水に溶いて描く...など、手法によっても変わりますし、加える水の量が多いか少ないかによっても変わります。

必要な道具の選び方

  • 紙について

水をたくさん使う場合は、厚みがあって丈夫、波打ったりヨレたりしにくい紙がおすすめです。

  • 筆について

水彩画用の柔らかい筆が良いでしょう。なお、丸筆、平筆、面相筆など、穂先の太さや形状の違いにより、タッチに違いが生じるので、自分がしたい表現や好みに近いものはどれか、いろいろ試してみると良いでしょう。

軸の部分に水を入れて使う水筆でも結構です。少しの水分で良い場合は、本体軸を押さないように気をつけて持ち、ささっと手早く使うよう心がけましょう。紙を広い範囲に濡らしたい場合や、たっぷり水分が欲しい場合には、あえて軸を押し気味に使う方法もあります。出過ぎてしまった水分は、普通の筆やテッシュペーパーなどで拭って調整してください。

  • 筆洗について

仕切りがあるタイプ/ないタイプがありますが、どちらでも構いません。予洗い用と仕上げ洗い用の2つを準備しておくと良いでしょう。絵の具を溶かすのに用いるきれいな水は筆洗とは別に準備しましょう。スポイトなどを使うと、1滴ずつ水分量が加減できるので便利です。

  • その他

水分量のコントロールができるよう、筆拭き用の雑巾やティッシュなどがあると便利です。

水彩色鉛筆を使う時に必要な画材

水の加え方によって変化するタッチ

紙や筆の状態や、色鉛筆の使い方など、どの段階でどんなふうに水を加えるかによって得られる表現が違ってきます。また、同じ方法でも加える水の量によって差が生じ、水の量が多いほど薄くぼかしたような表現になります。その違いを表したのが下の図表です。

とは言え、初めてトライする方にとっては、言葉だけの表現ではなかなかイメージがしづらいと思いますので、どのくらいの水加減を指すのか、紙と筆の状態を表す写真と合わせてご確認ください。

※図表にある「DRY」「MOIST」「WET」「POOL」は、含んだ水分の状態を段階的に区別するため、便宜上、名付けたものです。それぞれに定義がある訳ではありませんので、あくまで水分差を表す段階的な目安として捉えてください。

水彩色鉛筆を様々な状態で使った場合の塗見本

紙に含ませる水の加減

DRYは一切水を含んでいない乾いた状態。右側に進むにつれ水分が多い状態で、最も多いPOOLは紙の上にはっきり水溜りができる状態です。

水彩色鉛筆を使う際の紙の水の含ませ具合

筆に含ませる水の加減

紙と同様に右側に進むにつれ水分が多い状態。「しっとり・少し水分がある」筆は、毛先がまとまっているので細やかな描写に向いています。少し多めの「しっかり・濡れている」筆は、それよりも少し広い範囲に着彩する時などに。「たっぷり・水が溜まるほど」含んだ筆は、さらに広い範囲に、または紙の上にたっぷり水分を置きたいときなどに向いています。

水彩色鉛筆で塗った後、上から筆で塗る場合の水の含ませ具合について

水彩色鉛筆の使い方 実例編

ここからは、上の表でご紹介した表現の方法について、水彩色鉛筆と水の使い方を解説します。それぞれに味わいがあるので、ご自身のイメージに近い表現、より描きやすい方法を探ってみてください。

使い方その1:水彩色鉛筆でそのまま描く

水彩色鉛筆を使って水を使わずに書いた例

乾いた紙に描く場合の使い方

一般的な油性の色鉛筆画のように、乾いた紙に直接描いていきます。水を使わないので、紙の種類は水彩紙でなくても構いません。油性色鉛筆と同じ使い方なので、描画のタッチもほぼ同じです。

※油性色鉛筆の塗り方(技法やコツ)はこちらのページで詳しくご紹介しています。

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濡れた紙に描く場合の使い方

まず、紙の表面を水を含ませた筆でなでて濡らします。紙は水分を含むと波打ったりヨレたりしやすいので、そうなりにくい紙が扱いやすいでしょう。紙が湿ったら、その上から水彩色鉛筆で描いていきます。この場合、タッチとしては、クレヨンで描いたように太く柔らかい印象で、紙に含ませた水分が多いほどにじみの範囲が広くなり、輪郭がぼやけた見え方になります。なお、濡れた紙は圧力が強くかかると傷つきやすいので、芯があまり硬くない水彩色鉛筆を選び、芯先を尖らせないで使うと良いでしょう。

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タッチ見本

乾いた紙にそのまま水彩色鉛筆を使って描いたサンプルです。油性の色鉛筆のようなタッチで描くことができます。

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使い方その2:水彩色鉛筆で描いてから、水を含んだ筆でなぞる

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乾いた紙に描いて水でなぞる場合の使い方

乾いた紙に描いた水彩色鉛筆の上を水を含ませた筆でなぞります。紙への描き方は一般的な油性色鉛筆と同様です。上からなぞる筆は水彩用の筆または、軸を押すと筆先から水が出てくる水筆でも結構です。水に溶けた色が紙の上で広がると水彩画のようなタッチになり、色鉛筆とは違った表現が楽しめます。水の加減や筆の使い方によって描いた線が残る場合もありますが、それも水彩色鉛筆ならではの魅力。2色塗った部分を水で溶かすと混色ができたり、色を広く伸ばせば濃淡のグラデーションが表現できたりもするので、描きたいものや表現に応じて、この使い方をすると良いでしょう。

なお、まだ水の使い方に慣れていない方の場合は、「一部分を水彩色鉛筆で描く」→「描いた部分に少しの水を加える」というステップを繰り返して描き進めると、大きな失敗が避けられます。水彩色鉛筆で緻密に色合いやグラデーションを描き切った後、一度に多くの水を加えると、せっかく描いた表現が水に溶けて崩れてしまう場合があるので、その点に留意してください。

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濡れた紙に描いて水でなぞる場合の使い方

表面を湿らせた紙に水彩色鉛筆を使って描き、さらにその上を水を含ませた筆でなぞります。この場合も、紙に含ませた水分が多いほど、にじみの範囲が広くなります。この表現の場合、水を多く使うので紙が傷つきやすいのが注意点。硬く尖った芯は避け、筆でなぞる際は優しく少ない回数に留めましょう。

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タッチ見本

乾いた紙に水彩色鉛筆で描いてから、少しの水を含ませた筆でなぞったサンプルです。どれも水を含んだ上半分だけ(左から2番目左側面は中央部)が下半分と比べると、色が溶けてまわりと馴染み、柔らかくスムースな表現になっていることが分かると思います。

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使い方その3:削った水彩色鉛筆を溶かし、色を筆に取って描く

水彩色鉛筆を削って、水で溶いた場合の例

乾いた紙に描く場合の使い方

水彩色鉛筆の芯をカッターやヤスリなどで粉状に削って小皿やパレットに取り、そこに水を加え筆で混ぜて溶かします。あとは、溶けた色を筆に取り、乾いた紙に描いていきます。水彩絵の具に近く、水彩画で用いられる描画技法も同じように使えます。色鉛筆で描いた線が残ることもないので、より水彩画らしいタッチになるのが特徴です。なお同様の方法として、水を含んだ筆先で水彩色鉛筆の芯をなぞり、筆に溶け移った色で描く方法もありますが、色鉛筆の軸に水分が入って傷みやすくなるのであまりおすすめしません。

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濡れた紙に描く場合の使い方

表面を湿らせた紙に、水彩色鉛筆の芯を削って溶かした色を使って描いていきます。水加減が多いほど色は薄く、にじみの範囲は広くなるので、紙を濡らす水の量、芯の色を溶かす水の量で調整しましょう。

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タッチ見本

乾いた紙に、水彩色鉛筆の芯を削って水に溶いたものを使って描いたサンプルです。水彩絵の具とほとんど同じように描くことができます。

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使い方その4:その他の描き方 水彩色鉛筆と油性色鉛筆の併用

ここまでは、水彩色鉛筆のみを使用した描き方をご紹介してきましたが、さらなるステップアップの事例として、クーピー色鉛筆(油性色鉛筆)と水彩色鉛筆を併用する描き方をご紹介します。色が水に溶ける水彩色鉛筆と、溶けない油性色鉛筆の両方の特徴が活かされ、表現の幅がより広がります。

1)あらかじめ油性色鉛筆で描いた上を、溶かした水彩色鉛筆で塗る

エッジをきれいに残したい、形状をはっきり残したいという部分は、水を含んでも色が溶け出さないクーピー色鉛筆(油性色鉛筆)であらかじめ描いておきます。そうすると、削って水に溶かした水彩色鉛筆を含ませた筆で上からなぞっても、水分を弾いて輪郭が残ります。

油性色鉛筆と水彩色鉛筆を併用した作例

上の絵は、先に白色のクーピー色鉛筆(油性色鉛筆)でクラゲを描き、その後、背景部分を、削って水に溶かした水彩色鉛筆の紺色などを、たっぷりの水分で色をにじませながら塗ったものです。紙が乾いてから、部分的に水彩色鉛筆で直接描いて調整しています。こういった加筆のあり・なしによって生じる表現の差も面白味のひとつです。

2)濡れた状態の紙に、粉状にした水彩色鉛筆を振りかける

水分を含んで濡れている状態の紙に水彩色鉛筆の芯を粉状に削ったものをふりかけると、じんわりと色が溶けにじんだような表現が得られます。

濡れた紙に水彩色鉛筆を粉末にして振りかけた場合の作例

上の絵は、あらかじめ中央の魚だけをクーピー色鉛筆(油性色鉛筆)で描いてあります。そして、背景部分をたっぷりの水で濡らした後、削って水に溶かした水彩色鉛筆の黄・青・緑などを塗っています。重ねた色が溶け合って、にじみの表現が生まれていますが、油性色鉛筆で描いた魚は水分を弾いています。さらに、紙が濡れた状態のまま、削って粉状にした水彩色鉛筆を上からふりかけています。水分が多い部分では、水彩色鉛筆の粉が溶け、にじんたような表現が見られます。

本コラムページの監修にご協力いただいた先生のご紹介

あらい美惠子先生

東京芸術大学 美術学部デザイン科卒業。(株)リビングマガジン(現 (株)扶桑社) 入社 (1988 年退社 ) 後、独立。

第6回日本グラフィック展 協賛企業賞受賞。個展・グループ展参加多数。

ポスター・パッケージ・エディトリアル等グラフィックデザインと併せてイラストレーションとしても展開。

▼あらい先生のブログはこちら

https://menote.exblog.jp/

本ページに掲載の色鉛筆画について:©︎araimieko 禁無断転載

サクラクレパスのおすすめ水彩色鉛筆

サクラクレパスでは、主に2タイプの水彩色鉛筆をラインナップしています。野外スケッチに便利な筆や水入れがついたタイプと、高品質なメタルケース入りのタイプです。どちらも色展開が豊富で、使い切ったり無くしてしまったりした場合は、単色購入をしていただけます。

水彩色鉛筆

水彩色鉛筆と一緒に、筆、水入れ、削り器が入っているタイプです。12色と24色のセットがあり、ケースは中身が分かる穴あき様式になっています。持ち運びに便利なため、気軽に外でスケッチしたい人におすすめです。

WATERCOLOR

ヴァンゴッホ水彩色鉛筆

丈夫なメタルケースに入った高品質の水彩色鉛筆で、36色、60色のセットがあります。発色に優れ、水溶けも良いので、美しい作品を仕上げることができます。優れた耐光性を持ち、色褪せが少ないので、本格的な制作や、作品を長期保存したい人におすすめです。

VANGOGH

あらい先生の使用コメント
水性の特質が関係しているのか、乾いた紙にそのまま描く場合は、油性色鉛筆と比べるとやや芯が崩れやい傾向があるかも知れません。ですが、削り方や筆圧に気をつければ問題なく描画できます。水を使って描く場合は、色が滑らかに溶けて非常に使いやすいです。
セットとして興味深いのは、茶系、緑色系の綺麗な色味がとても微妙な色差で数多く揃っている点です。風景や植物・樹木などを描きたいと思っている方に向いていると思います。
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