SAKURA PRESS

【ボタニカルアートに挑戦】芝田美智子先生にパンジーの描き方を教わろう!

2024.04.18

特集

ピグマを使ったボタニカルアートの描き方ご紹介

ボタニカルアートとは、植物の特徴を正確に捉え、写実的に描いた絵のことを言います。細部までとても精密に描かれた絵は、植物の造形の美しさやイキイキとした生命力が感じられ、その魅力に引き込まれます。ここでは、そんなボタニカルアートについて、初心者の方でも挑戦しやすいよう、描き方の基本と押さえたいポイントをご紹介します。

ボタニカルアートとは?

ボタニカルアートは、いわば植物の肖像画。その植物の一番素敵な姿を切り取って絵にします。その始まりには諸説あり、薬効がある植物を見分けるために植物が詳しく描かれた…などの説がありますが、絵画としての美しさにも注目が集まり、アートとして発展してきました。

ボタニカルアートを描くためには、まずは基本的なルールを覚え、描き方の手順を身につける必要がありますが、たくさん描くほどに上達し、上級者になると、下の写真ような素敵な絵を描くことができます。

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「ボタニカルアート」の4つのルール

【#01】植物の特徴を正しく描く
植物にはそれぞれ特徴があります。花びらの数やつぼみのつき方、葉の形や葉脈の入り方などの規則性を見つけ、理解して正しく描きましょう。
【#02】原寸大で描く
大きさは植物の特徴の一つ。同じサイズで描きましょう。構造が複雑なパーツを拡大したり、大きな植物を縮小したりする場合は倍率を入れます。
【#03】 背景は描かない
植物の姿をはっきり、わかりやすく伝えるため、背景は描かず、色も塗りません。制作途中で紙を汚さないよう、背景の白をきれいに保つことも大切。
【#04】植物以外は描かない
花瓶や鉢、地面なども基本的には描きません。昆虫や鳥を描く場合には、蜜を集めるなど、その植物を訪れている目的を確認しましょう。ただの通りすがりは描きません。

ボタニカルアーティスト芝田美智子さんのご紹介

今回、取材にご協力くださったのはボタニカルアーティストとして活動する芝田美智子さん。杉並区浜田山、山中湖アトリエ、オンラインでボタニカルアート教室を開催し、一般の方向けにレッスンも行われています。制作された作品は、個展などで発表するだけでなく、ポストカートや商品パッケージ、雑誌の特集などにも採用されているので、もしかすると身近で目にする機会があるかもしれません。

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プロフィール

芝田美智子(しばたみちこ) 

雑貨バイヤーからフラワーデザイナーに転身、年間50件のウエディングフラワー、レッスン、広告撮影などを中心に約15年間、花に関わる仕事に従事。旦那様のイギリス転勤をきっかけに、キューガーデン、チェルシーフィジックガーデンでボタニカルアートを学びはじめ、英RHSロンドンショーにてゴールドメダル受賞、米ハントインスティチュート入賞。

▼ホームページ

https://www.michikobotanical.com/

Instagram

https://www.instagram.com/shibatamichiko32

書籍

おとなのスケッチ塗り絵 美しいボタニカルアート 〜麗しのバラと四季の花編〜

BOTANICAL DIARY ボタニカルダイアリーに「植物画」を描いて、楽しむ

今回、教えていただくのはペンで描くボタニカルアート

前出の「4つのルール」はあるものの、ボタニカルアートには様々な描き方があります。そのひとつが、ミリペンと呼ばれる極細のペンで描く方法です。リアルに彩色して仕上げる王道のボタニカルアートからは少し外れますが、初心者さんには描きやすい方法といえます。ペンだけで描いたボタニカルアートもスタイリッシュな雰囲気で素敵です。一部分だけ彩色したり、背景にだけ彩色したり、アレンジしても楽しめます。

ボタニカルアートにおすすめの画材ご紹介コラム

道具選びのポイントは?

ここでは、揃えるべき道具と、その選び方のポイントを教えていただきました。まずは、紙と鉛筆、消しゴム、ペンが必要です。その他の道具は、別の道具で代用できるものもありますし、徐々に揃えていっても問題ありません。

紙について
特に決まりはありませんが、着色する場合があることを考えると、水彩画用のものが良いでしょう。画用紙でもノートでも、形式は問いません。原寸大で描くのが基本なので、大きなサイズである必要はありません。A5やA4程度のサイズで良いでしょう。
鉛筆・消しゴムについて
下絵には鉛筆やシャープペンシルを使います。大まかに形をとるデッサンには描きやすく消しやすい2B、輪郭線を仕上げるにはHB、細部はHBのシャープペンシルもあると便利です。
ペンについて
下絵を描き終えたらペン入れをしますが、その際にはミリペンと呼ばれる極細のペンを使います。乾くと耐水性を持つ水性顔料サインペンを使うと水彩絵の具などで彩色しても滲みません。インキが出にくくなったペンは細かい部分の描画に重宝します。
その他の道具について
その他に、植物の観察や採寸に使う虫眼鏡や定規、植物を入れて保水するチューブや、固定のためのマスキングテープなど、場合に応じて準備すると良いでしょう。

芝田先生に教わる「パンジー」の描き方

ここからは、ボタニカルアートの描き方の手順をご説明します。芝田先生が描かれたパンジーの絵をもとに、初心者の方にも気軽に取り組んでいただけるよう、できるだけ簡潔にそれぞれの工程のポイント、上手く描くためのコツを教えてもらいました。参考にしながらぜひチャレンジしてみてください。

STEP01-05

【STEP 観察する

植物を正確に描くために、よく観察することはとても大切なことです。形状やつき方がどうなっているか、数はどうか、模様や脈の入り方はどうか、複数を見比べて、その植物の特徴や規則性がどこに現れているか観察しましょう。

STEP01

芝田先生のワンポイントアドバイス

情報の収集、記録をしながら観察を!

本やインターネットであらかじめ情報収集をしてから観察を始めるのもおすすめです。植物の様子は、時間の経過とともに変化するので、観察して気付いたことをノートなどに記録しておくと良いでしょう。

【STEP2】 構図を考える

植物の特徴のどこを見せたいか、伝えたいかを考えながら構図を決めます。植物全体を描く、植物の一部をクローズアップして描くといった方法の他、正面や裏側など見る角度を変えて描く、根や球根を入れて描く、ピックアップしたい部分を余白に描くなど、ボタニカルアートらしい構図を採用しても面白いでしょう。

今回は、パンジーの花とつぼみ、葉を1点ずつ並べた構図を採用しました。パンジーのような平面的な花は比較的描きやすく、今回のように描く対象を絞るとボタニカルアート初心者の方でも描きやすいモチーフと言えるでしょう。

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芝田先生のワンポイントアドバイス

完成サイズを決めると構図の目安に

ポストカードくらいか、もっと大きなスケッチブックか...など、完成サイズをあらかじめ決めておくと、構図が考えやすくなります。

構図のヒントは、咲いている姿にも

植物が実際に咲いている姿を想像すると、より自然に見える構図のヒントになります。

【STEP3】 下絵を描く

大まかな輪郭を取ってから、原寸大を意識して描く

紙の上にパンジーを配置し、2Bの鉛筆で位置や大きさ、茎の流れなど、おおまかに全体の形(アタリ)をとります。それをもとに輪郭を描きます。次に、実物を横に置き、よく観察しながら細部を描いていきます。この時、ボタニカルアートのルールの1つである「原寸大」を意識して描くのがポイントです。

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おおまかなスケッチが完成

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最終的に1本の線で下絵を仕上げる

鉛筆で描いた大まかな線を練り消しゴムで薄くし、上からより正確な線を描いていきます。細かい部分は、HBのシャープペンシルを使うと描きやすいでしょう。下書きの線は何重になっても構いませんが、最終的には納得のいく1本の線に絞って仕上げましょう。後で消すことを考えて、鉛筆の線はあまり強く描かないことをおすすめします。

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線を1本に絞った下絵が完成

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芝田先生のワンポイントアドバイス

目線を一定に保つことが重要!

下絵で失敗しないために重要なのは、最初に決めた視点を変えないことです。花の中心など、細部を観察する時に、覗き込みがちになるので注意してください。

【STEP4】 ペン入れする

滑らかな線で輪郭を描く

鉛筆で描いた下絵をペンでなぞり、輪郭を描きます。リラックスして滑らかな線を目指しましょう。輪郭が描けたら、下絵の鉛筆の線は消します。

ピグマを使ってボタニカルアートを描く

ハッチングを用いてメリハリを出す

ハッチングという技法を用いて仕上げをします。複数の平行線を描いて陰や濃淡を表すことで立体感や奥行き、質感などが表現され、植物の生き生きとした様子を描くことができます。慣れるまでは、光源の位置(光が指す方向)を統一して描くことをおすすめします。

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ハッチングを含むペン入れが完成

ボタニカルアートにおすすめのペンを使って描いたパンジー

芝田先生のワンポイントアドバイス

光の向きは「左斜め上から」を基本に

光の向きに決まりはありませんが、まずは一定方向に決めて練習すると良いでしょう。この場合、植物の左斜め上から光が当たっているように描くのが一般的なセオリー。この向きだと、描き方の例もたくさんあるので参考になります。

【STEP5】 彩色する

できるだけ植物の色に忠実に

ペンだけで仕上げても良いですが、色が入ると可愛らしい印象になるので、お好みで彩色してもよいでしょう。植物の特徴を正しく描くのがボタニカルアートのルールですので、植物になるべく近い色を作りましょう。まずは薄く塗り、塗り重ねることで色を濃くします。

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芝田先生のワンポイントアドバイス

濃度の薄い絵の具から塗り、立体感は重ね塗りで表現

最初は、薄めの濃度の絵の具から塗っていきます。はみ出さないように注意して塗っていき、陰になっている部分には絵の具を重ね塗りします。すると重ねた部分の色が濃くなり、立体感が出ます。

パンジーのボタニカルアートの完成!

ピグマを使って描いたボタニカルアートの完成作品

ボタニカルアートの楽しみ方

ボタニカルアートは、作品づくりの工程はもちろん、その後も色々なアイデアで楽しみ方が広がるアートです。今回描いたパンジーは、額に入れて飾るだけでなく、、ボールチェーン付きのカードにしたり、缶のラベルにするなどのアレンジをしてみました。楽しみ方は自由なので、描いた作品を暮らしの中にも取り入れてみてください!

ボタニカルアートの活用実例

ボタニカルアートに適したペンのご紹介

ボタニカルアートのペン入れには、ミリペンと呼ばれる極細のサインペンが適しています。サクラクレパスの「ピグマ」もミリペンのひとつ。乾くと耐水性を発揮するので着彩の際ににじみが生じません。

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芝田先生コメント
ピグマは普段から愛用しているペンのひとつです。ペンで植物を描く際にはピグマ003を使っています。インキがなくなるまで繊細な線が描けるところ、極細ではあるもののペン先が潰れにくいところが気に入っています。油性のペンだと線のタッチが重くなったり、滲んだりするのが難点ですが、水性のピグマはライトなタッチで描ける上、耐水性なので水彩絵の具で彩色しても、ほとんど滲みません。ボタニカルアートに適したペンだと思います。よく使うのは「くろ」ですが、少し茶色がかった「セピア」も使います。少し柔らかい印象になり、アンティークな雰囲気に仕上がるところが素敵なので、2色とも持っておくと便利ですね。