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【固形水彩絵の具の使い方】パンイラストで人気のmomoさんに描き方を教わろう!

2022.04.25

特集

固形水彩絵の具と言えば、コンパクトで持ち運びがしやすく、屋外で風景を描画するのに便利...というイメージが強いかも知れません。ですが、固形水彩絵の具の魅力はそれだけではありません!水彩画の初心者の方でも、基本的な使い方さえマスターすれば、身近なものを手軽に描いて楽しむことができるんです。そこで今回、Instagramに公開しているパンの水彩イラストが人気のmomoさんにインタビュー。初心者の方向けに、固形水彩絵の具の使い方アドバイスや、描き方のポイントを伺いました!

「固形水彩絵の具」はどんな絵の具?

固形水彩絵の具とは、その名の通り「固形」の状態の水彩絵の具です。水に溶ける性質を持ち、絵の具に加える水の量で色の濃淡やにじみやぼかしといった表現ができます。また、絵の具が収納されたケースとパレットが一体型になっているものも多く、持ち運びや塗り始める準備が簡単。水彩画をはじめてみようかな...という方にも手軽で使いやすいという点が固形水彩絵の具の特徴です。

なお水溶性という特性は同じですが、水彩絵の具には色を重ねて塗った際に下地の色が透けて見える「透明水彩」と、下地の色を覆い隠す「不透明水彩」の2タイプがあります。これらは基本的な使い方や仕上がりが異なるので、描きたい絵のイメージやしたい表現に合わせて選ぶとよいでしょう。

透明水彩での塗り重ね(混色)

不透明水彩での塗り重ね

学校で使ったチューブ入りの水彩絵の具との違いとは

水彩絵の具は固形のものの他に、チューブ入りのものもあります。小中学校の図工や美術で使った...という方も多いでしょう。

一般的に、チューブ入りの水彩絵の具は「透明水彩」が主流なのですが、学校教材の場合は「半透明水彩」と呼ばれる、図工や美術の授業がしやすいように開発された水彩絵の具が使われます。水の使い方によって仕上がりが変わり、水の量が多いと透明水彩調になり、少ないと不透明水彩調になる特徴を持っています。サクラクレパスの商品では「マット水彩」がこの半透明水彩絵の具に該当し、商品が誕生した昭和25年から現在まで数多くの学生に使われています。このように、チューブ入りの水彩絵の具には「透明水彩」「不透明水彩」「半透明水彩」がありますので、選ぶ際にはその点をよく確かめるようにしましょう。

マット水彩」のページでは、商品の特徴の他、半透明水彩が生まれた経緯やチューブ入り絵の具の歴史などもご紹介していますので、興味のある方はぜひご覧ください!

固形水彩絵の具の基本的な使い方

固形水彩絵の具を使うのは初めて...という方も多いと思いますが、基本を覚えれば使い方は特に難しくありません。ポイントとしては、色の濃淡を水の量で調整するという点。基本的に絵の具の白色は使わず、水の量を多くすることで紙の白色を透かし、淡く明るい色を描きます。白くしたい部分は何も色を塗らず、紙そのものの色を残します。

使い方 STEP1 水を含ませた筆で絵の具の表面を溶かす
絵の具の形状が小さめなので、筆は適したサイズのものを使う
使い方 STEP2 絵の具が溶けたらそのまま紙に着彩
水の量で色の濃淡を調整する。混色して色を作ることも可能
使い方 STEP3 描き終わったらケースに蓋をして収納
絵の具の表面が汚れている場合は、濡れた布などで拭き取る

水彩画を描くのに必要な道具について

水彩画を描く際、固形水彩絵の具の他に必要な道具は、紙と筆、筆洗です。これでないとダメ!というような道具や使い方のルールはありませんが、水彩画に適した道具を揃えた方がきれいな仕上がりになるでしょう。

水彩画は水をたくさん使って描くので、水を含みやすい紙が向いています。ある程度厚みのある紙か、水彩紙と呼ばれる専用の紙がおすすめです。
筆も水の含みが良いものが向いています。素材は動物の毛やナイロンなど様々。ペンのような形状で軸に水を入れて使う水筆もあります。
筆洗 筆を洗うスペースと絵の具を溶かすきれいな水を入れておくスペースがあると便利です。水筆を使用する場合は筆洗は不要です。

固形水彩で描くパンイラストが人気!momoさんのご紹介

今回取材に協力してくださったmomoさんは、オンラインで水彩画レッスンをされており、ご自身の作品を公開しているInstagramも大人気!中でも、固形水彩絵の具で描かれたパンやタルトの絵は、良い香りが漂ってきそうなほどおいしそうです。

momoさんの作品はインスタグラムで公開中!

momoさんの愛用品と、初心者の方への道具選びのアドバイス

momoさんが普段使われている道具は、サクラクレパスの固形水彩絵の具「プチカラー」の48色セットと、付属の水筆がメイン。紙は描くものに合わせて変えるものの、F0(180×140㎜)サイズの小さめの水彩紙を使うケースが多いそうです。その他は、下描きの際に使うシャープペンシル(2B)と消しゴム、絵の具の試し塗りをする紙と水筆の色を拭き取るティッシュがあればOKというくらい超ミニマム。momoさん曰はく、「道具は身近にあるものでも構わないので、まずは描きたい!という気持ちを最優先に。自分の環境に合った道具を見つけてください!」ということでした。

また、道具を揃えるところから始める初心者の方向けに、おすすめの道具を訊いてみたところ、次のようなアドバイスをいただきました。

固形水彩絵の具について
色は絵の具を混ぜて作れるため色数は少なくても問題ないのですが、ある程度多い方がワクワクするので、自分でも使っている48色セットをおすすめすることが多いです。始めたばかりの頃は、固形水彩絵の具の使い方に慣れてないこともあり思った色を作るのが難しい場合もあるので、色数が多めのものを選んでおくとあまり手間取らず着彩を楽しめると思います。
紙について
私が今使っているのは水彩紙ですが、固形水彩絵の具で絵を描き始めた当初は、安価な画用紙に描いていて、使い方に慣れてきた1年後くらいに水彩紙に変えました。今でも、高級な紙だと緊張してのびのび描けないので(笑)、どこでも手に入りやすい一般的な水彩紙を使っています。また、最初から大きな絵を描くのは難しい...と感じる方は、まず小さなサイズの紙に描いてみると良いと思います。小さめだと着彩の面積も少なくなるので気楽に描けます!
筆について
絵の具セットに付属でついていることも多いので、まずはそれで十分かと思います。私も付属されていた水筆から使い始めました。水筆は筆洗が不要なので、子どもやペットに水をひっくり返される心配もなく、準備や片付けなどがラクなのも便利です。まずは描いてみて、描きたいモチーフや描きやすい大きさなどに合わせて選ぶと良いかと思います。
その他、あると便利な道具について
絵の具の試し描き用に、スケッチブックやクロッキー帳などがあると良いと思います。絵の具そのものの色、パレット上に水で溶いて見える色、紙に着彩して見える色、それぞれ違いがあるので、色の確認をするのに使います。また、クロッキー帳は1冊あるとスケッチの練習用にも使えます。

momoさんに教わる、固形水彩絵の具を使ったイチゴタルトの描き方!

ここからは、momoさんが描かれたイチゴタルトの絵をもとに、描き方のポイントやコツを教えていただきます!下に記載したSTEP1からSTEP6の描き方の手順に沿って詳しくご説明するので、ぜひ参考にしながら描いてみてくださいね!

  1. STEP1:下描き
    描きたいもののスケッチを行います。
  2. STEP2:下塗り(薄い色)
    まずは薄い焼き色の部分を下塗りします。
  3. STEP3:重ね塗り(中間の色)
    下塗りよりも濃い焼き色の部分を重ね塗りします。
  4. STEP4:重ね塗り(濃い色)
    さらに濃い焼き色の部分を重ね塗りします。
  5. STEP5:おいしい色の追加
    おいしそうに見える色を部分的に追加します。
  6. STEP6:細部の仕上げ
    細部を描き込んで仕上げます。
    ※モチーフによって下描きの線を消すこともあります。

描き方 STEP1:下描き

全体から徐々に細部を。描きたい部分を重点的に。

全体をざっくり描いてから細部を描いていきます。いきなり細部を描いてしまうと、全体がアンバランスになった場合、時間をかけて描いたところも消すことになってしまうからです。また、モチーフを見たまま描くというよりも、惹かれる部分や面白みを感じる部分など自分が描きたいと思う部分に重きを置いて、心地よいカタチになるまで粘って描いてみてください。

角度や描きやすさを意識した配置を。

対象物がよりおいしく見える角度、特徴がより分かりやすい角度で配置すると、描きやすくなるため楽しく描けます。複雑なカタチのものは俯瞰で描くのもおすすめです。また、光が当たる方向は対象物の斜め後ろ(半逆光)など、1点に絞ると描きやすいでしょう。

イチゴタルトの下描きダウンロード

さっそく固形絵の具を使ってみたい!という方のために、momoさん作の下描きをご用意!線の色が2タイプあります。塗り絵のように、固形水彩絵の具による着彩がお楽しみいただけます。

描き方 STEP2:下塗り(薄い色)

紙の白色を思い切って多めに残す

絵の具を一旦塗ってしまうと、紙の白色は二度と取り戻せません。なので、光が当たってキラッと反射している部分、白っぽい色の部分は実物よりも大きめに紙の白を残すのがポイントです。一部分が強く光る金属などと違い、パンや焼き菓子などはじんわりと光るので、一番明るい部分だけでなく二番目に明るい部分まで残すイメージで。

いちばん焼き色がついていない生地の色で

パンやタルトの場合、下塗りに使うのは一番焼き色がついていない生地の色と考えるとよいでしょう。ほとんど場合が、明度の高い黄色寄りの茶色です。またイチゴに限らずフルーツの場合は、色づき始めをイメージして色を選ぶと深みが出ます。

描き方 STEP3:重ね塗り(中間の色)

薄い色から濃い色へ、が塗り方の基本

一旦塗った色をより薄い色に変えるのは難しいので、薄い色から濃い色へと塗り進めるのが基本です。塗ってみて色味にパキッと差が出過ぎた場合は、その境目を中間の色を使って馴染ませます。色の濃さは水の量で調整。水分量が少ない程、色が濃くなります。

描き方 STEP4:重ね塗り(濃い色)

濃い色が紙に載らなくなったら、乾燥のタイミング

パンやタルトの場合は、ナマの生地にだんだんと火が通り、こんがりとした焼き色が付いていくのをイメージしながら徐々に濃い色を重ねていくと楽しく着彩できます。もっと濃い色を重ねたいのに、紙に色が載らない...という場合は、絵を乾かすタイミング。完全に乾かしてから、濃い色を重ねていきましょう。

描き方 STEP5:おいしい色の追加

パンやタルトたちをよく見ると、おいしさを感じるポイントの1つである黄色系やオレンジ系など鮮やかな色を見つけることができます。そこで、絵にもおいしさを感じさせる色をプラス。モチーフから感じる明るく鮮やかな黄色やオレンジ色を重ねると、焼きたての香りが漂ってきそうな色合いとなり実物のおいしさに近づけることができます。

描き方 STEP6:細部の仕上げ

仕上げ段階では、全体を均等に細かく描くというよりは自分が描きたいと思った部分を中心に仕上げます。最初のスケッチの際に、何に着目したのかを思い出しながら仕上げるとよいでしょう。また、データ化する場合は鉛筆の下描きを消してから整えることもあります。私は実際に自分で食べてから絵を描くことが多いので、食べた時に感じた味や香り、食感などを思い出しながらおいしさも表現する気持ちで描いています。

固形水彩絵の具で絵を描いてみたい方へ、momoさんからひと言!
食べ物、花、動物、風景など、いろいろと描いてみて、自分が描きたいモチーフな何なのかを探っていくと良いと思います。私は絵を描きだした頃、モチーフに選ぶものがなぜかパンばかりで、その時はじめてパンを毎日のように食べていてパンが好きなことに気付きました。私と同じように、意外なもので水彩イラストの楽しさに目覚める方がいらっしゃるかも知れません。
また、描き終わった後「上手く描けなかったな...」「もっとこんな風に描きたかった!」と感じる部分は、その絵の中でこだわりたかった表現である場合が多いです。なので、1度失敗したと思っても「もう一度描いてみたい!」と思うモチーフと出逢ったら何度も描いてみるのがおススメです。
私は学生時代にコンプレックスをこじらせて10年以上全く絵を描いていない期間があったのですが、誰かと比べるのではなく、自分自身の描きたいモチーフやポイントを見つけることに力を注ぐようになってから楽しく描けるようになりました。

動画で描き方をチェック!

momoさんがイチゴタルトに着彩していく様子がご覧いただけます。

サクラクレパスの固形水彩絵の具「プチカラー」とは?

momoさんもご愛用の「プチカラー」は、塗った部分の下地が透けて見える透明固形水彩絵の具です。優れた発色を備えながら、価格は比較的リーズナブル。絵の具、筆、パレットが一式揃った多色セットのラインナップが充実しています。また、単色でも購入が可能なので絵の具を使い切った場合に補充ができます。絵の具が収まっているケースの中に筆もパレットも収まるため、持ち運びに便利です。

12色~96色セットまで、カラーバリエーションが豊富

プチカラーセットのラインナップは、12色から96色まで計9タイプ。色数が少ないセットはコンパクトなので、屋外で描く場合にも手軽に携帯できます。また色数が多いセットは色の選択肢が豊富なぶん、初心者の方でも比較的容易に色づくりができます。

パールカラーや蛍光色といっためずらしいカラーも!

固形水彩絵の具は、基本的に白色を使わず紙の白色を活かして描くものなので、ピンクなどのパステル系の色を作るのには経験やテクニックが必要です。ですが、プチカラーの60色以上のセットには、そういったパステル系のカラーが含まれており、色作りが苦手な方や初心者の方にも安心。72色や96色セットにはシルバーやゴールド、さらにパール調、蛍光調のカラーが揃っており、より幅広い表現が可能です。

momoさんのプロフィール

イラストレーター/デザイナー 京都教育大学美術科教育卒

子育てと妊娠期のトラブルで動けなくなった時、癒しを求めるように子どもの頃から好きだった水彩画を描き始める。

主にパンとタルトなど自分の食べたおいしいものを描き、育児と仕事の合間にSNSで発信していたところ仕事の依頼が舞い込むようになり、企画やデザインの仕事と共に、書籍の挿絵やグッズ、商品パッケージなどのイラストを描いている。絵を夢中で描くことで心が落ち着き救われた経験を活かし、現在はたくさんの方に楽しんでもらえる水彩画レッスンをオンラインで実施中。

パンやタルトの水彩イラストを中心に作品公開をしているInstagramはフォロワー数約1.2万人、毎月趣味で壁紙配信をしているLINEはお友だち約1.6万人と大人気!

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