SAKURA PRESS

「コラム」クレパス700色・色名の法則

2019.10.01

特集

700色のクレパスが、サクラクレパス創業70周年を記念して、平成3年(1991)に作られました。美しい色にこだわりつづける画材メーカーの威信にかけて、日本初の洋画材料としては唯一のものである描画材料クレパスを開発した会社として、クレパスで世界最多色が作られたのです。これは市販品ではなく、保存資料として作られたものです。全700色には色名がついています。そこで、色名はどのようにしてつけられるものなのか、色名のつけかたの法則を紹介します。

色名の考えかた

「色名は人間生活とのかかわりの中で、動植物や天然現象など身近なものに着目し、それから感受したものをたいせつにして生活の中で創造されたものといえる。

それは、その色を指定するのに最もふさわしい呼称であること、そして生活の中で生かされるもの、いいかえれば色名そのものが美しく、呼びやすく、親しみやすく、覚えやすいという条件をそなえていた。

つまり色名は、単にその色を指定するための呼称ということではなく、その時どきの人びとの息吹を察知する手がかりともいえるのである。」は、 日本色彩教育研究学会の江幡潤氏が著した『色名の由来』からの一文です。色名は、それがどのような色であるかを想像させるような名前であり、その想像は多くの人たちの認識が合致するようでなければならないのです。

固有色名と慣用色名

「日本の色名には、草木染めの伝統から、その材料とした植物の名からきた色名が多く、また岩絵具などの顔料からきた色名もある。無機顔料や有機合成化学によって作られる今日の色料には、その成分を表わす名がつけられているものがあるが、それらは色名というよりは成分名であるから、一般の人はその名を聞いても色が想像できにくい。

それに対して、植物、動物、鉱物の状態色や自然現象の色からきた色名や生活の中の人工物の名からきた色名が多く用いられるのは、それらが多くの人の目に親しまれていて、その名から色が想像しやすいからである。

また人物名や地名や抽象的な名をつけた色名もある。これらの色名はいろいろなものの名を借り、またいろいろなことばを用いて、その連想によって色のイメージを伝えようとするもので、それらが人々の間で慣用されているうちに、あたかもその色の固有の名であるかのように、色と色名が密着してきているものを固有色名という。」(財団法人日本色彩研究所監修『色名小事典』)

こうした固有色名の中でも、特に日常的に使われて一般に広く知れ渡っているものを慣用色名と呼びます。

系統色名

色名には、さらに「系統色名」というのがあります。系統色名は、数少ない基本的色名を基にして数多くの呼び方ができるように、システマチックに組み立てられた色名です。

「色は主観的に受け取られやすいものなので、色単独では感覚的情報内容を的確に伝えにくいが、色が造形と結びついたり、色がことばと結びついたりするとき、その情報内容はある程度限定されてくるので、情報伝達の機能をもつようになる。つまり視覚言語となり得る。色名は情報の伝達機能上からいって二つの主な役割をもっていると考えられる。ひとつは色の分類指示ということ、他のひとつは色のイメージ内容を伝えるということである

色名の組立て

各種の色名をその組立ての上からみると、多くは次のような語形になっている。

1、トーンの形容詞色相の形容詞+2、イメージ連想語+3、基本的色名

例えば、ブライト・ピーコック・グリーン、ディープ・アマランス・パープルの色名で、後段の(3)にあたるグリーンやパープルの語は基本的色名であり、前段の(1)にあたるブライトやディープの語はトーンの形容詞であり、中段の(2)にあたる語は色のイメージを引き出す連想語ということができる。これら(1)(2)(3)の語が組み合わされ各種の色名ができている。

(3)の基本的色名と(1)の形容詞との組合せからなっている色名、例えばブライト・グリーン、ディープ・パープル、あるいはブライト・ブルーイッシュ・グリーンという色名が系統色名であり、これらは(2)のイメージ連想語がぬけたかたちになっていて、それだけに無味乾燥な名となっているけれども、色の分類指示という点では、これらの名は色の系統を確実にさし示すことができて有効である。

(2)のイメージ連想語が主となる色名が固有色名である。例えばルビー、アプリコット、青磁色など(2)の語だけでそのまま色名となっているものもあるし、(1)+(2)のかたちでライト・アプリコット、さび青磁色などと呼ぶこともある。(2)+(3)の語形をなしているものもある。ピーコックとだけいっても孔雀の羽根はいろいろな色を呈するからグリーンとかブルーをつけないとわからないという場合に(2)+(3)のかたちをとる。

さらに(1)+(2)+(3)のかたちをとるものもある。アマランスは伝説の中の仮想の花で、一年中枯れることのない赤紫の花をいうが、その語だけではどのような色かわからないので、トーンの形容と基本的色名とを組み合わせているわけである。」(財団法人日本色彩研究所監修『色名小事典』)

クレパス700色名

クレパス700色は、かつてあったヌーベルアーチストクレパス153色を基本にして、白色と灰色の濃淡になる4段階のトーンを加えて色数を増やしています。

このような方法で増色しているため、白色の分量を少なく加えた色は明度が高いのでライト(明るい)の修飾語を付し、白色を多く加えた色は彩度が低くなるのでソフト(柔らかい)を付し、灰色が少なく加えた色はグレイッシュ(灰みの)を付し、灰色を多く加えた色はダークグレイッシュ(暗い灰みの)を付しました。

なんとも無味乾燥な色名となっていますが、クレパス誕生から今日まで80余年、常に時代のニーズと科学技術の進歩とともに改良を続けてきた歴史を色名にも残した結果です。

赤系

黄系

緑系

青系

紫系

茶系

文責サクラアートミュージアム主任学芸員 清水靖子

TAG
#クレパス
#描く・楽しむ