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「画材の使い方」顔料と染料の違い

2019.10.15

特集

溶解性 染料は水や溶剤にとけるのに対し、顔料は水や溶剤にも溶けない。
粒子の大きさ 溶剤に溶けた状態での染料分子の大きさは1~3nm(ナノメーター、百万文の1ミリ)の径だが、顔料粒子の大きさは50~1,000nmの径である。体積にすれば染料分子の何千何万倍の大きさになる。
耐光性 一般的に染料は耐光性に劣るため日に当てると色あせやすいが、顔料は耐光性に優れている。
用途 染料は繊維の染色が主な用途で、顔料は塗料、印刷インキ、絵具をはじめ、合成樹脂の着色に用いられる。

彩色材料

顔料の歴史

人類が最初に用いた色は赤であったようである。赤色には生命を与える力があると信じられたようで、死体を赤土に埋葬したり、骨を赤く塗った遺物が発見されている。赤い色の素になるのが酸化鉄で、身近な自然の中に多く存在し地表に露出していて入手しやすい色だった。紀元前1万5千年頃のアルタミラやラスコーなど洞窟画の原始時代には黒、白、褐色、赤褐色、黄色の系統の5色があり、まだ青や緑色の系統はなかった。

  • 黒色……炭や煤
  • 白色……炭酸カルシウム系鉱物
  • 黄色…酸化鉄系鉱物
  • 赤褐色…酸化鉄系鉱物
  • 褐色…酸化鉄系鉱物

天然の土などの鉱物系顔料の発見。動植物から得られる色素など、自然界から手に入れることのできる限られた色を用いて、古代から人類は色彩文化を築き上げてきた。18~19世紀にかけては近代科学の発展とともに、化学的に合成して作られた着色材料が数多く発見されていった。

染料の歴史

紀元前数千年の古代遺跡や古墳から、藍染の麻布、あかね染の木綿などが発見されていることからも推測されるように、装飾品を彩るために古くから染料は使われていた。人類は長い間、草や木などの植物、貝や昆虫にいたるまで、天然の素材にさまざまな染料を求めてきた。

こうした天然染料の代表的なものには、藍草の葉、あかねの根、紅花の花、紫草の根、黄肌の樹皮からの色素がありましたが、藍を除いてはあまり満足できる染色効果が得られなかった。

それは、天然染料には特有の良さがあるものの、種類は多くなく、品質を安定させるのも難しく、一度に得られる量も限られるという難点があったからだ。

染料の歴史を大きく変えたのは、19世紀中ごろに合成染料が作り出されたことである。近代産業の発展の中で、藍とあかねは合成化学の芽を育てたといえる。藍は合成インジゴとして、あかねはアントラキノン化学の基礎となり、双方は合わせてインダンスレン染料へと発展していった。さらに、石油化学の発展にともなって見出されたアニリンやアリザリンの合成は、合成染料の飛躍的進展に貢献したのだった。

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