SAKURA PRESS

「画材の紹介」水彩絵具の組成、種類、特徴

2019.09.20

特集

絵具を水で溶いて使うという方法を用いる水性絵具は、起源を古代にまでさかのぼれるほど古い歴史を持ち、その種類もたくさんあります。古典技法のテンペラやフレスコも、日本画の岩絵具や顔彩も水性絵具です。さらに、現代ではアクリル絵具が、やはり水で溶いて使う水性絵具です。

ここでは、今日の私たちが一般に水彩画を描くときに使う水性絵具である「水彩絵具」を取り上げています。水性絵具の長い歴史から見れば、今日の私たちが水彩絵具と言っているものは、18世紀後半から19世紀初頭にかけて完成した比較的あたらしいものと言えるでしょう。

水性絵具で描く絵画

テンペラ画 テンペラ用の絵具
フレスコ画 フレスコ用の絵具
水彩画 水彩絵具
日本画 岩絵具、顔彩
水墨画
アクリル画 アクリル絵具

水彩絵具の組成

水彩絵具は顔料を水溶性樹脂で練り合わせて作ります。水溶性樹脂は、顔料の粒子を画面に接着させる役割があり、これにはアラビアガムやデキストリンなどが使われています。さらに補助剤を添加しています。補助剤には絵具の伸びを良くする体質顔料があります。また、チューブや容器の中で絵具が安定した状態に保たせる補助剤として、適度な湿り気を保たせるための湿潤剤や、カビが生えないようにする防腐剤などが添加されています。

01顔料+体質顔料+水溶性樹脂+補助剤

02混合撹拌する

03ロールミルにかける

04チューブなどに充填する

05水彩絵具ができあがる

水彩絵具の種類

水彩絵具にはチューブ入り水彩絵具と固形水彩絵具があります。チューブ入りは絵具を液状のままチューブ容器に充填したものです。固形絵具は絵具を容器に入れて固形状にしたものですが、半乾きの状態で固形にしているパンカラーと、絵具を乾燥させて粉状にしてからプレスして固めたケーキカラーの2種類があります。

パンカラーは透明水彩絵具を固形にしたものです。絵具が小さな四角い容器に入っているので、その形状からキャラメルカラーとも呼ばれることがあります。大きさには3種類あり、一番大きいものはホールパン(上辺が30mm×12mm)、その半分の大きさのハーフパン(15mm×12mm)は良く見かけるサイズです。日本ではあまり見かけることはないのですが、さらに小さなクォーターパン(11mm×11mm)があります。ただし、大きさはメーカーによって多少の違いがあります。

ケーキカラーには透明水彩絵具を固形にしたものと、不透明水彩絵具を固形にしたものがあります。不透明水彩絵具には「不透明水彩絵具」あるいは「オペーク水彩絵具」の表示がされています。ケーキカラーの容器の形状には、四角いものと丸いものがあります。

大きな作品を描くときや、広い面を塗る場合には多めに絵具を溶いておく必要があるのでチューブ入り絵具が便利です。小さな作品を描くときや、野外スケッチなどに出かける場合の携帯用としては固形絵具が便利です。

チューブ絵具

サクラマット水彩

サクラ透明水彩

レンブラント水彩絵具

固形絵具(パンタイプ)

レンブラント固形水彩絵具

ヴァンゴッホ固形水彩絵具

ターレンスプチカラーセット

固形絵具(ケーキタイプ)

ロイヤルターレンス

水彩絵具の透明・不透明

水彩絵具には透明水彩絵具と不透明水彩絵具があります。透明水彩絵具と不透明水彩絵具の違いは、顔料と水溶性樹脂(アラビアガムやデキストリン)との配合する量の比率ですが、透明水彩絵具は顔料の量に対する水溶性樹脂の比率が高く、不透明水彩絵具は顔料の量に対する水溶性樹脂の比率が低く配合されています。

透明水彩絵具は水溶性樹脂の量が多いので、絵具を塗った表面はフラットになります。いっぽう、不透明水彩絵具は水溶性樹脂が少ないので、凹凸のある塗面になります。たとえば、透明なガラスとすりガラスをイメージしてください。透明なガラスは表面がつるつるしているので透明に見えますが、すりガラスは表面がざらざらしているので、表面に当たる光が乱反射して不透明に見えるのです。

透明水彩絵具と不透明水彩絵具の他に、学童用の半透明水彩絵具があります。これは絵具を溶く水の量を調整することで、透明にも不透明にもできるようにしたものです。

透明水彩絵具の特長

混色は絵具をパレットの上で混ぜ合わせてもできますが、透明水彩絵具は透明調なので、画面の上で色を塗り重ねることで鮮やかな発色と美しい混色が作りだせます。たとえば、青色を塗った上から赤色を塗り重ねると、二色は色セロファンを重ねたように、画面上で混ざり合って透明感のある美しい紫色ができます。塗り重ねていくことで色に奥行きが出ます。また、画面の上で混色するので、塗り重ねを繰り返しても色がにごりません。

しかし、最初に塗った色の上に、何色を塗り重ねるとどんな色になるかを、あらかじめ想定して計画的に描きすすめていく必要があるので、ある程度の経験や知識がないと描きにくい絵具と言えるでしょう。また、基本的には白色を使わないで、白い水彩紙の地色を生かして彩色しなければならないので、やはり計画的に描きすすめていくことが必要です。

透明水彩絵具では溶く水の量を調整して濃淡を表現したり、“にじみ”や“塗りムラ”を生かした高度な表現ができます。「ウォッシュ」、「ウェット・オン・ウェット」などの水彩画の技法は、色をぼかしたり、にじませたりすることが基本となっています。

不透明水彩絵具の特長

不透明水彩絵具は不透明調なので、塗りムラができにくく、大きな画面でも均一な塗面になります。不透明であるため被覆力があり、下に塗った色を覆い隠すので、失敗した場合には色を塗り重ねて修正することができます。透明水彩絵具が色をにじませたり、ぼかすなど、多めの水で溶いて薄塗りで使うことに適しているのに対して、不透明水彩絵具は厚塗りあるいは塗り重ねて使うことに適するよう作られています。

ポスターカラーも不透明水彩絵具の一種です。ポスターカラーは、溶く水の量を多くしていっても不透明調のままで、彩度の高い発色が特長です。ポスターカラーは、その名の通り、かつてはポスターの版下原稿を描くための図案用絵具として使われてきました。現在でも平面構成などデザインワークはじめアニメーション原画を描くために使われるため、不透明で発色の良い色鮮やかな顔料が用いられています。

半透明水彩絵具の特長

小中学校の教材として使われている学童用のマット水彩絵具は、1950年(昭和25)にサクラクレパスが開発した半透明水彩絵具です。透明水彩絵具での技法が小学生には難しく、不透明水彩絵具では絵画的な技法も限られるため、それぞれの特長を兼ねそなえた学童に使いやすいよう半透明水彩絵具が作られました。

水の量を調節することにより、透明調にも不透明調にもなります。水を多くして薄く溶くと、透明水彩絵具のように“にじみ”や“ぼかし”ができるので、風景、静物、人物などを写実的に表現するのに適しています。また、少なめの水で濃く溶いた絵具で塗り重ねると、描きそこねた箇所の修正が簡単にできるので、子供たちが失敗をおそれずにのびのびと描けます。

透明水彩での塗り重ね(混色)

不透明水彩での塗り重ね

文責サクラアートミュージアム 主任学芸員 清水靖子(サクラクレパス)

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