人物を描くにも近道はありません。少しだけ…と思いながら違ったほうにズレてるのがわかると、さらに焦ってとらえられなくなります。一足でポンと行けたら…と願ってしまうものです。本作は一歩ずつ大事に進まれたからこその足跡が残っています。少年の力強い眼差しがそれを物語ってますが一方で、猫と少年の明暗の表現が絵の中でもう少し活きてくると、より空気は和んできます。枯れ葉を揺らす風の感触がそっと満たされるように…。（中田憲男）